ニューヨーク生まれのマライア・キャリー。 幼いころから歌手になることだけを夢見つづけてきた彼女は現在23歳。仕事の面では、すでにグラミー賞受賞、連続的なNa1ヒット、そしてリリースされたばかりのニュー・アルバム『ミュージック・ボックス』は、ビルボードでMo1と、輝かしいトップスターとしての座を保っている。そして言うまでもなく、プライベートでは、ソニーの社長であるトミー・モトーラ氏と結婚という電撃的なニュースで私たちを驚かせてくれた。聞くところによると、結婚式はマンハッタンにある、トニーメトロポリタンクラブで行なわれ、バーブラ・ストライサンド、マイケル・ボルトン、ブルース・スプリングスティーン、ビリー・ジョエルといったアーティストらが顔を見せていたとか。マライアは、ダイアナ妃の結婚式のビデオを何度も見て、彼女よりも長いベールを身につけたり、フラワーガールは何と49人もいたりとロマンチックな結婚式に満足だったようだ。そんな彼女を追っかけて、飛行機で約10時間。滞在していたニューヨーク、ヒルトンホテルから約10分歩いたところにあるソニースタジオに彼女が現われるということだ。ソニースタジオは、もちろんマライアの夫であるトミー・モトーラ氏のもので、なかでは、MTVジャムの収録なども行なわれていた。約束の時間から約2時間遅れて、ヘア・メークアップ、スタイリスト、マネージャーと約10名くらいの団体様がご到着。そこに〝HI!〟とひょっこり顔を出して、お辞儀をしたマライア・キャリーがいた。23歳にしてはずいぶんと落ち着いた雰囲気のマライヤは、ソファーに寝っ転がってニッコリ笑った。そのすべてを得たような笑顔の理由、そしてニュー・アルバムやツアーの予定などについてインタビューすることにした。
NYのあちこちのラジオ局で、「ドリームラヴァー」がヘビーローテーションになっていますね。あぁ、これを歌っている人と会うんだと聞くたびに緊張しましたよ(笑)。ドリームラヴァーとは、公私ともにハッピーなあなただけに意味深ですね。
まぁ私生活の話は後にして(笑)、この曲は、特に若い人たちとかが恋をするといつでも初めは〝あー彼ってサイコー!.〟とか思うものだけど、少したつと、その人がサイアクな男に変わったりするケースがよくあるでしょう。だからドリームラヴァーを見つけるのは大変だけど、きっとどこかにいるから私を早く救いにきてっていう感しの曲なの。
その「ドリームラヴァー」でも相変わらず高音の美声を聴かせてくれますが、あれは いろいろと練習をしたんですか?
というか、私は生まれてすぐってまでにはいかないけど本当に幼いころから歌が大好きでいつも歌ばかり歌ってたから、特別歌うことに関して訓練のようなものはしなかったし、したとしても好きでやってることだから訓練みたいに感じなかったでしょうね。私の母親はオペラ歌手だったから腹式呼吸の方法とかは多少教えてくれて、それは役に立ったわね。ロックとかポップスターで胸で歌ってる人が多いでしょ?おなかで歌うと、息も続くし声も厚くなってすごくいいみたい。あの高音 はたまたま遊んでてできるようになったの。私はこのとおり、ふだんしゃべってる声はすごく低い声なんだけど、朝起きるとこの声が全く出なくてその代わり、ああいう高い声しか出ないの(笑)。それでそのまま歌えるかと思ってベッドに寝っ転がって試してみたら、できちゃったってわけ。ああいう高音を出せるのは、ほかにもミニー・リパートンとかいるし、私だけの特技とかは別に思ってないんだけど私の年代ではきっと私ぐらいしかいないかもしれないわね。
ところで、今回のニュー・アルバムをつ くってみての感想はどうですか?
今回は私、そしてウォルター・アファナシエフがメーンプロデュース、そしてC&Cとか実力のあるプロたちといっしょに仕事ができてとても楽しかった。共作もあるけど基本的には私が書いているから、周りのみんなも私の意見を尊重してくれるの。アルバムは、前作と同じタッチではあるけど、アーティス トとして成長したし演奏力も伸びたと思うわ。アルバムの制作に入ると、私は本当に一日中スタジオにいるって感しなの私はスタジオ・ミュージシャン的な人間だから、スタジオで今何が起こってるか全部自分の目で見ていないと嫌なのよ。だからいろんな人が〝映画とか他のメディアへの進出はしないんですか?〟なんてよく聞いてくるけど、私はそんなことやってる暇がないからやらないの。それにもし暇があったとしても、私は単に歌手になりたかっただけだから、興味がないからきっとやらないと思う。歌手としてもっともっとうまくなりたいし、歌いたい曲もまだたくさんあるもの。人の曲をカパーしても、私の色を大切にした歌い方をもっと学びたいわ。ジャクソン5の曲、そして今回ニルソンの曲もカバーしたけど、私の曲として歌いあげるよう にしたのよ。
ニルソンの曲は、日本では昼ドラマのテーマ曲で使われて、ちょっと復活してるんで 狙ったのかと思いましたよ(笑)
あら、アメリカでも、メロドラマのイメージの強い曲だと思ってる人が多いのよ。この 曲を嫌ってる人もいるんじゃない(笑)。
こういう昔の曲をよく聴くんですか?
そういう70年代の曲とかを聴いて育ったからね。小さなころはレコードを買うお金なんてなかったから、お兄ちゃんやお姉ちゃんのもってたスティービー・ワンダー、アレサ・フランクリン、ローリング・ストーンズ、あとお母さんのもってたビリー・ホリデーとかサラ・ヴォーンとかのレコードをよく聴いてたの。兄弟とは年が離れてたから、私が小さいころに兄弟は独立して家から離れていったので、私がそのレコードを全部もらっちゃったの。昔のジャズとかソウルが好きでよく聴くの。レコード以外、小さいころよく聴いたのはラジオ。好きなステーションの名前は、言うとほかから悪魔の手紙でも来そうだから言わないけど(笑)、R&B系が多かったわね。ラジオが私の音楽源だったの。
じゃあ、自分の曲が初めてラジオでかかったときは感動したでしょう?
もう今でもハッキリと覚えてる。高校卒業してすぐのことだった。〝これ私よ~!〟って感しで友達といっしょに大騒ぎしたわ。友達には、高校で毎日のように〝私、絶対歌手になるの!〟と言いまくってたから、その豪語してたことが実現してプレッシャーがなくなったっていうのかな、それがラジオで自分の曲がかかったことで証明できたっていう感しだったわ。
もビックリでしょう?
そうね。でも私は以前と全然変わっていないから。結婚したことは、私のほうこそ驚いたくらいなの。だってこんなに若くして結婚するなんて思わなかったし、結婚なんて本当は一生しないと思ってたもの。私の親は私が小さいころ離婚しちゃったから、結婚に対していいイメージもなかったし。でもいざ結婚してみたらとっても幸せ。トミーと私は年も離れているけど、似ているところも多いしね。何といっても、食事を作ってくれる人がいて便利なのよ(笑)、なーんて!
彼との恋愛で、ラブソングを書くうえで成長したのでは?
直接にとはいえないけど、ハッピーでいることは大切ね。音楽は自分を幸せにしてくれるものだから、わざわざ自分が書いて悲しくなったり、考えさせられたりする曲は私には向いていないと思う。私もまだ勉強中の身だからメッセージ色の強いものはきっと無理だと思うし、それって合う人と合わない人とがあるじゃない。だから私としては、聴いて落ち込むようなことを書くより、もっと普通の生活の面でポジティブになれるような曲を書いて、ファンの人たちに提供したいと思ってるの。
ファンといえば、やっと来日。米ツアーを行なうんですよね?
日本だけじゃなくて、アメリカでもコンサートらしいコンサートってやってないの。それは単に自分の中で準備ができてなかったからで、別にもったいぶってたとかいう意地悪な理由しゃないのよ。私は曲を書くことをメーンにやってたスタジオ・ミュージシャンだから、人の前で演奏することに慣れていないの。普通のミュージシャンは、その反対で、クラブとかでギグを重ねて曲を書くことを覚えていくって感しなんだろうけどね。私の場合、ソニーの社長との劇的な(笑)出会いのすえのデビューで〝現代のシンデレラ・ストーリー〟だって騒がれたから、アーシニオ・ホール・ショーとか、トゥナイト・ショーとかテレビに出る話ばかり来ちゃったの。コンサートをやらないでいたら、ロパクの噂も出るし。だからMTVのアンプラグド・ショーをやったときはすっきりしたわ。実はスゴ~く緊張してたんだけどね。初めて出たグラミー賞のときも、有名な大スターが私の横で〝何だこいつ〟って感しでじろじろ見てるから、緊張しまくったわ。でも今では人の前で歌うことに抵抗がなくなったし、自分は自分、私はマライア・キャリーだって自信がもてるようになったからね。コンサートは、シンプルにして私の歌に集中してもらいたいわ。
本当に来日公演が楽しみです。きょうはどうもありがとうございました。
こちらこそ。ツアーに出て私のファンに会えるのが楽しみ。アメリカでさえ、ファンに会ったことがないの。日本のファンの人たちは、話によるとすごくていねいで親切だって聞いてるから来日が待ち遠しいわ。ファンの人たちからたくさんのファンレターが届いているんだけど、毎日食べる暇もないくらい忙しくて、読む暇も返事を書く暇も残念ながらないの。コンサートで会えるまでは、私の宝箱(MUSICBOX)を開けて曲を聴いていてね。