マライア・キャリー

コンサートをやらないのはチャンスがなかっただけ。MTVでのパフォーマンスが楽しかったから、いまはツアーを始めることを真剣に考えているわ

Mariah Carey - Santa Claus Magazine (Japan) - August 26, 1992 - Scans
Magazine Scans
Santa Claus (JP) August 26, 1992. Text by Natsumi Itoh.

デビューと同時にトップシンガーの仲間入りを果たし、グラミー歌手というタイトルまで手に入れてしまったマライア・キャリー。最近『ヴィジョン・オブ・ライヴ』というライブ盤を発表、シングルカットした「アイル・ビー・ゼア」は、ビルボードなどの各誌でNo1になり、人気が衰えていないことを証明した。マライアはデビュー後、一度もコンサートをやらず、テレビなどのパフォーマンスも数えるほど。それがいきなりライブ盤を発表したわけだから、ファンだけでなく、業界のあちこちがビックリしたのも無理はない。ライブ盤で聴かれるケタはずれの実力に、コンサート実現を望む声が噴出しているのだ。渦中の人、マライア・キャリーにニューヨークでインタビューすることができた。

コンサートを行ったことのないあなたが、いきなりライブ盤を出したのはどうしてですか。これはMTVの番組での演奏でしょう?
そう。MTVの『アンプラグド』っていうショーなんだけど、話をもらったときからなんか楽しそうだったし、MTVサイドが私のことをよく考えてくれて、バックバンドやゴスペルシンガー、ストリングスなどで私の要求をすべて満たしてくれたの。自分の曲をライブでやるチャンスだと思ったし、いいものができると思ったの。

いままではツアーもなかったし、コンサートを開くということもなかったと思うけど、どうして今回はOKしたのですか。
別にいままでやりませんと言っていたわけじゃないわ。たまたまチャンスがなかっただけ。今回は仰々しいステージを組んで、コンサートですって感じでもなかったし、大観衆を前にっていうことでもなかったから、私自身も本当に楽しめたの。パフォームすることの楽しさもあったしね。だから、コンサートを開くことを、いまは真剣に考え始めている。もし私がツアーをしたいと思ったときには、きっとこの経験が助けになると思う。

シングル「アイル・ビー・ゼア」はジャクソン・ファイブのカバーですが、この曲をやろうと思ったのは?
ジャクソン・ファイブは昔から好きでよく聴いていたの。まだ本当に小さいころね。兄や姉がアルバムを買ってきて聴いているうちに、私も曲に合わせて歌うようになった。両親や親戚は私の声がマイケル・ジャクソンにそっくりだって笑ってたわ。なかでも「アイル・ビー・ゼア」は好きだった。でも、前々からこの曲をやろうとしてたんじゃない。じつは、MTVショーの前の晩に決めたことなの。心からリメイクしてみたいってね。幸いオーディエンスの反応もよかったし、やることに決めてよかったとも思ってるわ。だからライブ盤を作ることになったとき、シングルにしようって思ったの。

マライア・バージョンの「アイル・ビー・ゼア」はゴスペルタッチになっていますが、ああいうビッグヒットのリメイクは難しいのではないですか。
もちろんオリジナルに影響されるし、インスピレーションは受けるけど、自分が歌えば自分の世界になるし、自分自身の感性をつけ加えようとしてるから難しくはないわ。「アイル・ビー・ゼア」みたいな曲はスタンダードクラシックになっていて、世代を超えていると思う。20年前にもポピュラーだったし、いまでもポピュラーでしょ。たぶん20年後にもポピュラーだと思う。それって、その時々にリバイバルしていくっていうよりも、常にあるものだと思うの。だから、現代の感性を加えた曲を、私が歌ったというだけのことじゃないかしら。

なるほど、じゃあ、20年たったマイケル・ジャクソンについてはどんな印象がありますか。
マイケルは『スリラー』で超ビッグになったし、いまでもすごいでしょ。それは大変素晴らしいことだと思う。でもマイケルの声はジャクソン・フアイブのときのほうがいいわね。特別にいいわ。美しいし。

声といえば、マライアは超人的な声域を誇っているわけだけど、それはどうやって身につけたのですか。
うーん、正確にはわからない。ちょっと前までみんなそうだろうと思ってたから。もちろんレッスンはしてたけど。

どんな?
発声練習とか呼吸法とかね。ママが私のコーチになってくれて、小さいときからトレーニングはしてた。それを続けてるだけなの。普通は子供のころに発声練習してたとしても成長するとやめちゃうでしょう。

それじゃ、どうやってその声をキープしているんですか。
通常のレッスンとよく寝ること。私の場合は毎日ラジオを聴きながら歌ってるだけ。

ラジオ?じゃあ、いろいろな人の歌を歌っているんですか。
いつも歌ってるの。子供のころからずっとね。とにかくラジオが大好きで、どこに行くときも必ずラジオを持っていくし、クルマの中でも絶えずラジオを聴いている。ラップやR&B、ポップ、とにかくなんでも聴く。5分ごとにチャンネルを替えたりしてね。みんな驚くわ。ある曲に合わせて歌って、間奏になるとチャンネルを替えて、飛び込んできた曲に合わせてまた歌うっていう感じ。

『ヴィジョン・オブ・ライヴ』のバックアップシンガーのひとり、ティレイ・ロレンツのデビューにあたって、プロデュースもしたそうですね。
彼は「アイル・ビー・ゼア」を一緒に歌ったシンガーなんだけど、デビューアルバムのうち、2曲を共作して、5曲をプロデュースしている。じつはいま、スタジオでレコーディングの真つ最中なのよ。

プロデュース業は大変じゃないですか?
ひと言でいうなら難しくて簡単ね。簡単じゃないな。楽しいって言い換えさせてね。とにかく、テクニック的なもの、たとえばサウンドを徐々に作り上げていったりするのは難しい。でも、私はボーカルが大好きだから、そのアーチストの最高のボーカルパフォーマンスを引き出すのが楽しいの。いろいろなことをやっていくうちに、最高のものに出合えたときは本当にうれしい。私は予算やスケジユールなどにはタッチしていないから、そちらの方面の難しさはわからない。純粋に音楽的なところだけでやっているんだけど、その意味で言うならプロデュースはこれからも続けていきたい。

今後の予定はもう決まっているんですか。
ティレイのあと、いくつかは決めてるけど、いまはナイショ。いま言えるとしたら・・・・・・そう、これから、その時々の感性を大事にして、ゴスペル的なものや、ポップなもの、それぞれにやっていきたいと思う。いまはR&B的なことをやっているけど、自分の感性がどういうふうに変わっていくかわからないし、私がアーチストとしてやる必要性を感じないものでも、他のアーチストを通して、プロデューサーとして表現するならいいかもしれないし。もっともっとたくさんのアーチストの最高のボーカルパフォーマンスに出合いたいと思ってるわ。

ボーカリスト、マライアの今後は?
いま、ニューアルバムの準備に入っているところ。まだ始まったばかりだから、詳しくは言えないけど、来年には発表できると思う。えっ、内容の紹介?そうね、悪いけどまだ言えない。だって変わるかもしれないし。いまできてる曲が確実にアルバムに入るかどうかもわからないから。

これだけの人気者だから、映画界からの引き合いもあるけれど、いまは女優としてのキャリアにはまったく興味がないと笑うマライア。その姿には早くも風格さえ漂い始めている。ひさしぶりに登場したシンガー中のシンガーという感じだった。しかし、期待していたコンサートツアー開始宣言は、ついに聞かれないままに終わった。言葉の端々にライブパフォーマンスに対する自情がほとばしっているようだから、マライアがその気になる日を待つしかないようだ。